気象衛星ひまわり

ひまわり8号による夜光雲観測手法開発

2021-11-22

概要

電気通信大学、情報通信研究機構、明治大学、国立極地研究所、九州大学らの研究グループは、静止気象衛星ひまわり8号による全球画像の地球周辺部に着目することで、高度80-85 km付近に発生する夜光雲を高感度で観測する手法を考案、同手法をリアルタイムのひまわりデータに適用するシステムを構築しました。今回の研究成果は、「気候変動のカナリア」とも呼ばれる夜光雲を、高感度、且つリアルタイムで連続的にモニタリングする新手法として、地球温暖化など気候変動に関する研究への貢献が期待されています。

詳細

夜光雲は、高度80-85 km付近に発生する天然の雲で、その実態は氷粒子です。地球温暖化に伴う超高層領域の寒冷化に敏感に反応して、氷粒子である夜光雲の発生が促進されると考えられており、「気候変動のカナリア」とも呼ばれています。このように、超高層寒冷化や地球温暖化の指標となる夜光雲の変動を捉えるために、夜光雲を高感度で連続的にモニタリングするシステムが重要であると考えられています。

ひまわり8号による全球画像の地球周辺部に着目することで、高度80-85 km付近に発生する夜光雲を検出する手法を考案、同手法をリアルタイムのひまわりデータに適用するシステムを構築しました。同手法による夜光雲観測は、超遠距離の静止軌道(軌道高度~36000 km)からの観測でありながら、米国NASAの夜光雲専用観測衛星(軌道高度~600 km)と同等の感度を達成しており、夜光雲の変動を十分な感度で捉えられることも実証しました。

情報通信研究機構からは夜光雲検出手法の開発において協力を行ったほか、夜光雲の高感度リアルタイムモニタリングシステムのためのリアルタイムデータ提供を行っており、地球大気科学・データ科学の2つの側面から成果創出に貢献しました。

ひまわり8号による夜光雲の高感度リアルタイムモニタリングシステムは、電気通信大学のウェブサイト(http://ttt01.cei.uec.ac.jp/himawari/)を通じて、一般公開されています。世界の研究者らによる地球温暖化研究への貢献だけでなく、一般の方にもご利用いただけます。例えば、全球的な夜光雲の現況情報を提供しておりますので、地上から見えている雲が、普通の雲か夜光雲かを判別する際に活用するといった利用方法が想定されます。

本研究結果の詳細については、2021年11月2日にオンラインで行われる「第150回地球電磁気・地球惑星圏学会 総会および講演会」で発表される予定です。

図1 :ひまわり8号による夜光雲の観測の概要

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参考文献

  • Y. Hozumi, T. T. Tsuda, K. Hosokawa, Y. Ando, H. Suzuki, T. Murata and T. Nakamura, "Horizontal Movement of Polar Mesospheric Clouds observed from the Himawari-8 Geostationary Meteorological Satellite," JGR Atmospheres, 1900, doi: 10.1029/2021JD035081.
  • K. T. Murata, P. Pavarangkoon, A. Higuchi, K. Toyoshima, K. Yamamoto, K. Muranaga, Y. Nagaya, Y. Izumikawa, E. Kimura and T. Mizuhara, "A web-based real-time and full-resolution data visualization for Himawari-8 satellite sensed images," Earth Science Informatics, vol. 11, no. 2, pp. 217-237, 2017, doi: 10.1007/s12145-017-0316-4.

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